会社解散・会社清算ガイド/全手順と全知識

現在、少子高齢化が進み、長男相続の概念が薄れているため、事業承継対策の一つとして会社の解散・清算を選択する経営者が増えています。解散・清算を決定するまでは複雑な心境かもしれませんが、手続きは法律に従って行います。タイミングを見計らって会社の解散・清算をしましょう。

1.会社の解散・清算を考える前にもう一度検討してほしい事項

会社の解散・清算は会社を手放す手段の一つです。大きく考えて会社を手放す方法として以下の4つに分けられると思います。それぞれに良し悪しがあると思います。
・ご家族やご親族への承継
・職員への承継
・M&A(第三者への売却)
・解散・清算
参考HP:中小機構 中小企業経営者の為の事業承継対策:http://www.smrj.go.jp/sme/succession/succession/index.html
赤字会社ではないにもかかわらず、会社を解散しようと考えられる場合として、下記の場合が多いのではないでしょうか。
・年配で引退を考えているが、事業承継者がいない
・法人事業から個人事業へ切り替える
・共同経営者の脱退で法人の必要がなくなった。

改めて考えて事業承継が難しいしM&Aも考えてみたがやはり「解散・清算」しかないと思った場合に読み進めてください。それでは「解散・清算」について説明したいと思います。

2.会社の解散・清算をするメリット、休眠状態のまま保持するメリット

会社を解散・清算するのは手間がかかる、またいつか事業を再開するかもしれないと考え休眠状態にしておく方も多いと思いますが、以下では会社の解散・清算をすることのメリットと休眠状態のまま保持するメリットについて触れたいと思います。

<解散・清算をするメリット>

1.毎年、法人税(均等割分)の納付がなくなる。
事業活動を行っていなくとも、会社が存続している場合は法人住民税の均等割りがかかります。H28.4月の神奈川県横浜市の場合は都道府県民税20,000円、市町村民税54,500円の合計74,500円が最低かかります。解散・清算することで納付義務がなくなります。
*解散清算しなくとも休眠の届け出を都道府県税事務所と市町村に提出すると均等割りを納めなくて済む場合もあります。各都道府県、市町村にご確認ください。神奈川県、横浜市は納付義務免除はありません。

2.毎年、決算申告が不要。
事業活動を行っていなくとも、会社が存続している場合は税務署への決算申告の義務は変わりません。
休眠状態時に申告をしない場合は青色申告の取り消しと繰越欠損がなくなります。
3.役員任期について考える必要がありません。
事業活動を行っていなくとも、会社が存続している場合は登記事項に変更が生じた場合や役員任期が切れた場合は法務局にて登記の手続きが必要です。これを怠ると裁判所より追徴金がかせられる場合があります。解散・清算することで随時の登記義務がなくなります。

 <休眠状態のまま保持するメリット>

1. 今後の会社の在り方をじっくり考えることが出来る。休眠するには将来どのような状況にしたいかを考えて休眠すること大切ですので、休眠状態にする前に、必ず顧問税理士に相談しましょう。

2. 他事業を始める際に繰越欠損がある場合、有利に働く場合がある。

*会社を休眠状態にする場合の注意点
固定資産を多く持っている場合は休眠のさせ方に注意が必要です。
固定資産を多く持ち、毎年赤字が続き繰越欠損がある状況で休眠状態にして様子を見て、いざその後解散を決めた場合に資産の清算で利益が出たが、繰越欠損がなく、法人税が高くなってしまう場合があります。休眠に入る前も必ず税理士等にご相談することをお勧めします。

3.会社解散・会社清算とは

株式会社、合資会社、合名会社、有限会社の法人会社が会社を閉じよう(消滅させよう)と考えた際には会社解散・会社清算の手続きが必要となります。会社解散・清算とは経営者が意志を持って会社組織を消滅させる手続きです。「解散と清算」は一連の流れで行います。

解散・清算1

A解散

現在行っている営業活動を停止し、会社を消滅させるための準備に入ったことになり、清算手続きするための法律事実です。会社を解散する自由の発生により任意解散か強制解散に分けられます。

A-1任意解散

1.定款で定めた存続期間の満了
2.定款で定めた解散の事由の発生
3. 株主総会の決議
4. 合併

A-2強制解散

5. 破産手続開始の決定
6. 解散を命ずる裁判

B清算

会社が解散した後に債権債務を整理する活動を行い、株主に残余財産の分配を行い、清算結了した時点で会社組織の消滅となります。債権債務の整理とは土地建物や有価証券などの資産を現金化する、買掛金などの債権を回収する等です。清算結了とは株主総会などで決算報告書が承認されたことで、清算が結了されたことになります。

B-1任意清算

合名会社、合資会社にのみ認められています。定款の定めや、総社員の同意によって残余財産を処分できる方法です。

B-2法定清算

法律で決められた手続きに従い清算していく方法です。
B-2-1通常清算:会社の機関である「清算人」が整理手続きを進めていきます。
B-2-2特別清算:裁判所の監督のもとに清算手続きを進める破産の手続きに近いイメージです。会社が債務超過の疑いがある場合などに適用されます。

※「解散・清算」と「破産」は混同しやすいですが別物ですのでご注意ください。会社破産とは事業継続が困難な場合に裁判所の関与を経て、会社更生法や民事再生法、破産申請などの法律に従って処理される手続きです。
近年の解散件数は以下の通りです。
●解散件数:37,495件(2014年法務省設立登記数)
参考HP:法務省 政府統計の総合窓口 「会社及び登記の種類別 会社の登記の件数」
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001134471
●休廃業・解散件数:26,999件、倒産:8,812件(2015年東京商工リサーチ調べ)
参考HP:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160122_01.html

4.会社解散・会社清算の流れ

株式会社の解散・清算の流れは下記のとおりです。

解散・清算2

参考HP:法務局 商業・法人登記申請
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/touki2.html

 

5.費用

会社を解散・清算するにあたり実際どの程度の費用が掛かるか試算してみましょう。士業によって値段は違うと思いますので、実際手続きを行う場合には事前に依頼する税理士事務所、司法書士事務所に確認してください。

(解散)

会社解散   登録免許税  ¥30,000
清算人選任  登録免許税  ¥9,000
・登記簿の閲覧        ¥500
・登記簿謄本         ¥1,200
・解散公告          ¥30,000~
・登記手数料         ¥50,000~
(司法書士事務所によって違います。)
・解散申告料         ¥100,000~
(事業規模、消費税の有無、税理士事務所によって価格は変わります。)

(清算)
清算結了   登録免許税  ¥2,000
・登記簿の閲覧        ¥500
・登記簿謄本         ¥1,200
・清算結了手数料       ¥20,000~
(司法書士事務所によって違います。)
・清算結了申告料       ¥50,000~
(事業規模、消費税の有無、税理士事務所によって価格は変わります。)

解散には最低¥39,000、清算には¥2,000と耳にすることも多いと思いますが、実際はそれだけではすみませんので事前に確認することをお勧めします。

6.まとめ

いかがだったでしょうか。会社を解散するというのは大きな決断だと思いますが、手続き自体は法に従って行いますので注意して手続きを行ってください。

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