決算期は何月が良いの?起業時の決断「決算期」について

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個人事業主の決算期間は12月とする統一のルールがあります。一方で、会社の決算期は経営者が自由に選ぶことができます。決算日を決めるにあたって、3月31日にしようと何となく考えている方も多いと思いますが、決算日はよく考えて決めた方が経営上好ましく、節税となることもあります。

「決算期はいつがいいのですか?」という質問を受けることがありますが、色々な論点があり、それぞれの事情に合わせたアドバイスをしています。同時に皆さん共通してアドバイスできるポイントもあります。この記事では、決算を決める際に皆さんに考えて頂きたいポイントを解説しています。

決算期をどのように決めるかお悩みの方は参考にしていただけると幸いです。

決算期の時期

1.1 決算期はいつにしてもよい

法人の決算期は、経営者側が決めるもので何月でも良いのです。実際には何月を決算期としている法人が多いのか見てみましょう。

国税庁がHPで公表している決算月別の法人数は右の通りです。

https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/hojin1997/11.htm

会社の決算期というと3月のイメージが強いのですが、3月決算の会社は21%、5社に1社程度です。こうして見ると日本の会社の決算月は意外に分散してます。

1.2 上場企業は株主総会対策で他の会社に合わせていた

多くの会社が3月31日を決算日にしている最大の理由は総会屋対策と言われています。

総会屋とは株式を若干数保有して、株主の権利行使を濫用することで会社等に不当な要求をする者を指します。上場会社は総会屋が株主総会に出席し辛くするために、他の会社と決算月、株主総会の開催日を同じ日にしていました。昭和56年に商法が改正され、総会屋は姿を消していったのですが、その名残が今も残っているのです。

決算期の決め方

2.1 売上の高い時期で決める

季節による売上変動の大きい業態では、「決算書の見映え」と「節税」のどちらを重視するかにより決算期の設定が異なります。

例えばビールがおいしい飲食店では7月から9月の売上が最も高くなります。決算書の見映えを重視する経営者は売上が高い9月を決算期にします。銀行の融資の判断においては損益計算書と貸借対照表が特に重要な判断材料となりますが、売上の高い時期が期末にあると決算書の改善が図りやすくなり、銀行から良い評価を得る上で有利に働きます。決算書重視の経営者は売上の高い時期を期末に合わせます。

一方、同じ会社であっても、借り入れのニーズが少なく、銀行の評価よりも節税を重視している経営者の多くは売上が高くなる直前の6月を決算期に設定します。売上の高い7月から9月の利益の実績を年度の初めに確定できると、その後、年度の利益予測がしやすくなりピークシーズン後の10月から期末の6月にかけてじっくりと節税対策をとることができるのです。

2.2 現金残の多い時期に合わせる

多くの会社で現金残の多い時期を決算期としています。それは決算申告に合わせ発生する法人税等の納付に備えるためです。業種にもよりますが、現金の回収は売上が上がる月の1~2か月後となるのが一般的です。売上と現金回収期間から入金額を予測し、大きな支払についての出金予測を加味すれば、現金残の多い時期、少ない時期の予測ができます。

例えば内科系の医療法人ですと、風邪が流行する秋から冬に最も売上が高くなります。売上のうち窓口で患者からの入金は保険治療であれば1割から3割だけで、保険請求分を含めた売上全額を現金回収できるのは翌々月になります。1月に売上が最も高くなる医療法人の場合だと現金残高が最も高くなるのは2か月後の3月になるのです。この医療法人が12月を決算期に設定してしまうと、決算期の2ヵ月後の2月に発生する法人税、地方税、消費税の納付時に資金繰りで苦労することが予想されます。1月末が決算期であれば3月が納付時期となり、資金繰りの心配は少なくなります。

現金残の多い時期に期末があると節税対策が取りやすくなるメリットもあります。節税の方法は色々ありますが、翌期に必要なものをあらかじめ購入する、決算賞与を支給する、保険に加入する、といった対策は全て支払いを伴います。決算期に現金が不足していると適切な節税対策ができないという事にもなってしまいます。節税対策の選択を増やすために、現金残の多い時期に決算期を設定するのは有効な戦略です。

2.3 入札、許認可、免許更新時期に合わせる

公共事業の入札をしている、許認可や免許の更新を行っている、官公庁と関係の深い事業を営んでいる会社は決算期を3月にしておくと非常に便利です。なぜなら、官公庁が用意する様々な規則や書類は3月末決算を前提に設計されており、会社の期末を3月で一致させておくと煩雑な提出書類作成が楽になることが多いのです。建設業、介護や教育の業種、社団法人や協同組合の多くはこうした理由から3月決算を選択しています。

2.4 実地棚卸の業務負担の少ない時期を選ぶ

在庫の多い業種では、実地棚卸の業務負担を考慮して決算期を決めている会社もあります。

決算期を迎えた際に、小売業やメーカーでは、実際に店舗や倉庫で商品在庫を数える「実地棚卸」業務が発生します。月次の決算は仕入れ数から売り上げ数を引いて在庫を計算で求めるだけで十分ですが、少なくとも期末の決算では実際に目で在庫を確認し、帳簿上の在庫と付け合わせる必要があります。実地棚卸は時間や労力がかかり現場の業務負担が多くなります。

そこで在庫の少ない月を決算期に設定して実地棚卸の業務負担を減らしている会社が多くあります。例えば、夏用のファッション用品を扱うアパレル業でしたら、決算期を9月に設定します。夏の販売のピーク後の9月末に決算期があれば決算期の在庫数は少なくなっています。実際に数える在庫の数が少ないほど実地棚卸にかかる時間と労力は減り、決算業務の負担は軽減されます。棚卸の負担が少ない時期に決算期を設定すれば決算業務の負担が減るのです。

2.5 会社の繁忙期を避ける

会社の繁忙期を避けて決算月を決めている会社があります。

法人税の申告期限は決算期末から2か月間です。決算処理業務は相当に面倒で、決算の数値確定には節税、銀行対策等も考慮に入れて検討すべきことがたくさんあります。業務の繁忙期と決算処理業務が重なってしまうと、本業に支障をきたす可能性が高まります。例えば観光産業は、年末年始や8月に仕事に業務量がピークになる会社が多くありますが、そうした会社は繁忙期のある8月や12月に決算期を設定し、その時期を迎えたら本業に集中できなくなることは容易に想像ができます。

業務負担の変動幅が大きい会社では、業務の繁忙期を避けて決算期を設定することは非常に重要です。

2.6 税理士の繁忙期を避ける

決算業務と深く関係している税理士の繁忙期を避けるのも有効な考え方です。

税理士が忙しい月に決算期を設定してしまうと、税理士との打ち合わせ時間をしっかり確保できなくなる恐れがあり価値のあるアドバイスを聞きそびれるリスクが高くなります。

税理士が忙しいとされる月は、個人の確定申告を提出する2月から3月、会社の税務申告が集中しがちな5月、年末調整時期の12月です。決算月の時期について率直に税理士に相談してみることをお薦めします。繁忙期を外して決算期を設定した会社に料金を安くするサービスを展開している税理士もいます。税理士の繁忙期を避けることで、税理士からのアドバイスを受けながら決算及び申告業務を行う事ができるのです。

2.7 消費税の免税期間を最大化する

消費税の免税期間が最長になるよう期末を設定する会社があります。

設立時の資本金が1,000万円未満の場合、設立から2事業年度の間は、消費税の免税事業者(消費税を納める義務がない事業者)となります。この期間が最長(12か月)となるように最初の事業年度を設定すると免税の恩恵を最大に受けることができます。考え方は簡単で設立した月から最も遠い月を期末にするのです。例えば7月に会社設立したのであれば、6月を決算月にすると免税の恩恵を12か月間受けられます。

第2期目以降は、前年の上半期の売上が1,000万円を超えないことが、免税事業者となる条件です。具体的には、前事業年度の開始日(第2期目なら第1期目)から、6ヶ月の課税売上高かつ給与支払い額が1,000万円を超えていると課税事業者になります。12か月の売上と給与の額が1,000万円を超えそうな場合は、第1期の事業年度の期間を7ヶ月未満になるよう事業年度を設定することで通算の免税期間を12か月以上にすることができます。

平成31年10月には消費税率が8%から10%にアップする予定です。経営する会社の投資や利益の見通しによっては、消費税免税の期間を考慮に入れて法人設立の時期と決算期を決定してください。手元に残るお金に大きな差がでる可能性があります。

消費税の免税を考慮して決算期を決める場合は税務の専門家のアドバイスを受けることを強くお勧めします。税法は常に変わりますし、ちょっとした手続きやタイミングの違いが大きな差になってしまいます。うっかりミスで無駄な税金は払いたくないものです。

2.8 短い決算期間を作る

現金を使わずに節税ができる有効な手段が短い決算期を定めることです。

実効税率は一律で約40%と思っている方が多いのですが、中小企業の税率は一律ではありません。法人税率は所得が400万円まではおおよそ20%、800万円までは25%、800万円以上は35%で計算します。期中に大きな利益が上がる場合、短い決算期間を設定して所得を分けると節税が可能になります。利益が800万円(25%)を超える前に決算を行い、低い法人実効税率(約25%)にて法人税を2回に分けて支払うのです。

新しく法人を立ち上げる際は初年度の法人所得が800万を超えないうちに最初の決算期を迎えられるよう期末を設定すると良いかもしれません。

後で詳しく述べますが、年度の途中で決算期を短く変更することも可能です。期中に決算期を変更するのはさほど難しいことではありませんが、正しい手続きで行う必要があります。変更にかかる費用や労力のデメリットもきちんと検討する必要があります。節税のための変更手続きが労力に見合ったものになるかどうかは専門家にアドバイスを求めて慎重に検討してください。

2.9 思い入れを反映する

ここまで決算期の決定時にはいくつからの要素を考慮して決定する必要があることを述べてきました。どのように設定してもメリット・デメリットはあります。多少の損得は抜きにして個人の思い入れを決算期に反映するのは非常にお薦めです。

会社を設立する際には起業した方のそれぞれの事業や会社への思い入れがあるはずです。その思い入れを決算期に反映するのです。決算日は月末である必要もありません。例えば出資者の誕生日や個人的な記念日を決算日にすることもできます。自分のラッキーナンバーが「1」の方は「1月末決算」、極端な例ですが、「1月11日決算日」でも可能です。こだわりの決算日を設定した結果、モチベーションがアップする、運気が上がって経営上のプラスになる、そうした良い影響が期待できる場合は、個人の思い入れを反映した決算日を設定してみてはいかがでしょうか。

ただし、会計ソフトの利用を考えている場合は、「締め日を月末日以外には設定できない」会計ソフトもありますので予め確認が必要です。

決算期の変更をする場合の手続き

3.1 決算期の変更はいつでも可能

先にも触れました通り決算期は、いつでも変更することができます。

企業設立時に決める必要のある決算期ですが、当初に思い描いたように会社の経営が進む方は稀です。実際に会社経営が始まって気付くことが多いと思います。繁忙期、業務負担、資金繰り、常に予想外の事態は発生するものです。国の制度や税法も変化し続けます。そんな状況で決算期を変更したいと考える経営者も多いでしょう。必要な手続きを踏む必要はありますが、決算期は期の途中でも比較的簡単に変更できます。決算期を変えたくなったら気軽に顧問税理士の方に相談してみて下さい。変更のメリットやデメリット、手続きについて教えてくれるはずです。

3.2 事業年度は1年以内

企業の設立時に決める決算期は、設立日から1年以内の日にする必要があります。変更時も同じです。変更する日から1年以内の日にします。例えば、8月1日に決算日を変更したいと考えたのであれば、翌年の7月31日までを期限として決算期を定める必要があります。

3.3 株式会社の場合は株主総会の決議をとる

事業年度変更は、株主総会の特別決議事項ですが、登記手続きは不要です。決算の変更は株主総会の特別決議を経て定款変更しなければなりません。特別決議は、議決権の過半数を持つ株主の出席があり、2/3以上の賛成を得て可決されます。

3.4 異動届出書と議事録を税務署へ提出

決算の変更する際には異動後速やかに提出しなければならない書類があります。まずは決算期を変更する旨を記載した書類である異動届出書(事業年度の変更)を作成します。変更を決議した株主総会の議事録と一緒に税務署に提出します。

3.5 決算期変更による影響も考慮する

企業活動に適した決算期への変更は可能ですが、それによる影響を事前に把握することが必要です。変更に伴って役員の任期や支払が前倒しになることがあります。支払いが前倒しになるのは経営上の負担となるでしょう。

また、1年に満たない状態で決算をむかえてしまうと、前期との比較、その期の経営分析が難しくなる側面もあります。経営分析が難しくなると、株主や銀行への説明にも影響します。それ以上に経営者自身が経営の数字を把握しにくくなることの理解が低下するデメリットは経営の上で大きなハンデとなる可能性があります。影響をしっかりと考えた上で、決算期変更の決断をしてください。

会社の動きを考慮して1番良い時期を決算期にしよう

多くの中小企業や個人商店などの小さい会社が3月決算を選んでいる本当の理由は、「何となく」、「会社の決算は3月であるという先入観」だと思います。顧問税理士や先輩経営者から言われた通りに適当に決めてしまう方も多くいます。

会社の決算月なんていつだって同じでしょ?と思われていた方も多くいるかと思いますが、これまでに述べてきたように適切な時期に決算期を選ぶのは会社経営の観点から結構大きなポイントです。節税対策にも影響を与えます。会社の動きを考慮して経営上最も都合の良い時期を決算期に設定してください。

まとめ

今回は、決算期を決める上で考慮すべき点をまとめました。選ぶポイントは1つではありません。あまり神経質になる必要もありませんが、この記事が決算期を決める際の助けになれば幸いです。

 

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