今期すぐに実行できる!法人税節税対策の具体的な手法

法人税の節税対策をしたいと思っているものの、具体的にどうすれば良いのか分からないとお悩みの経営者の方も多いことでしょう。節税対策はただやみくもに行なっても効果は期待できません。今回は、全体を把握しながらも、今すぐできる節税方法を中心にお伝えします。少しでも節税を行ないたいと思っている経営者の方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

1.節税対策方法

早速ですが「法人税の節税方法」についてご紹介いたします。

節税対策は様々な方法がありますが今回はその中でも今期からすぐにできる節税対策のみをご説明したいと思います。

①売上高

⇒売上の計上基準が今のままで適切なのかを見直してみてください。

御社は現在何を基準に売り上げを計上していますか?出荷基準ですか、検収基準ですか?原則、売上が多ければ多いほど課税が増えます。そのため計上を遅らせると節税になることはすぐにお判りでしょう。しかし計上基準は原則として一度決めた基準で毎期継続適用しなければなりません。計上基準をまちまちにすると、租税回避の疑いをかけられてしまう場合があります。計上基準を変える場合は事前に税理士に相談し、変更根拠を明文化しておくと必要があります。

②期末在庫

在庫は寝ているお金です。期末に向けてできる限り少なくしましょう。

方法は下記の三種類あります。

  1. 見切り処分をする(値引き販売等)
  2. 商品評価損を計上する。
  3. 陳腐化した商品を廃棄する。

それでは、順に説明していきます。

 A.見切り処分をする(値引き販売等)

寝ている在庫を販売することにより、在庫を費用にし、現金が増えキャッシュフロー改善になります。

B.商品評価損を計上する

期末在庫の評価方法は「原価法」と「低価法の」二種類あります。節税の面のみで考えると「低価法」を採用したほうが有利です。低価法とは当期の期末原価と期末時価を比べて期末時価の方が低い場合に期末時価を採用した場合でも、翌期に当期の期末原価を繰り越さずに、前期の評価を戻し入れて改めて評価する方法である。

期末在庫評価の際に評価額が小さくなり、課税額が少なくなります。在庫の評価方法は税務署に「棚卸資産の評価方法の届け出」が必要となります。いったん選択した方法については原則継続適用となります。

C.陳腐化した商品を廃棄する

熟考して仕入れた商品でも、残念ながら滞留在庫になってしまったり、保管の際に災害等で損傷して既存の型が変わってしまい使えなくなってしまうことが起きる場合もあります。長期の滞留在庫は在庫費用も掛かり、費用にも収益にもならないお荷物です。残念ですが廃棄処分してしまいましょう。廃棄の際は廃棄証明書となるマニュフェストを同時に入手しましょう。

 ③人件費(役員報酬、給料手当、賞与手当、退職金)

ここでは人件費を役員報酬、給料手当、賞与手当、退職金の4つに分けて考えてみましょう。

A.役員報酬

役員報酬は事業年度開始月から3か月内に決めた『定期同額給与』が原則です。2006年度に税制改正が行われ毎月同額でなければ原則経費として認められなくなりました。(『定期同額給与』で決定した以上の給与を支給すると損金算入できません。)つまり事業年度開始月に役員給与を適切に設定することはとても大切なポイントとなりました。賞与を支払いたい場合は『事前確定届出給与』を提出することによって経費に損入することが可能です。しかし『事前確定届出給与』は決定した額を同額支給しなければ、支給した全額が経費として認められなくなってしまうというリスクがあるため、『定期同額給与』で賞与分も調整する方が良いでしょう。

B.給料手当

法人税を納める黒字企業のみ対象となりますが、平成25年より「所得拡大促進税制」が新設され、ある一定の条件を満たした企業は、給与等支給増加額の10%を法人税から税額控除することが出来ます。(中小企業は20%)

<条件>

期間:平成25年4月1日から平成28年3月31日までの期間内に開始する事業年度

要件:①雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5%以上であること

②雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること

③平均給与等支給額が比較平均給与等支給額以上であること

参考HP:経産省

http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.html

C.賞与手当

社長役員への賞与はAでお伝えした通り、事業開始月3か月以内に決めなければいけませんが、社員へは特別手当を出すことが可能です。社員への特別手当は全額損金に算入できます。社員に来期も頑張ろうというモチベーション効果を与えられ、貰って当たり前とならない適切な金額を支給しましょう。

D.社長、役員の退職金

会社の利益からバランスを考え、社長、役員の退職金額を考えていきましょう。

役員退職金を支給すると、一度に多額の損金を計上することができ、所得を圧縮できます。青色申告の場合は繰越欠損を9年間繰り越せるため、節税効果が大きいです。

また、退職金は所得税法上も有利になっています。

余談となるかもしれませんが、退職金を積み立ていく方法をご紹介します。一般的に社外に留保したほうが得とされています。メジャーな手段として、生命保険と国が運営している3つの共済制度があります。

D-1生命保険

生命保険に加入することによって社長に起こりうる不測の事態に備えることができます。

長期平準保険やがん保険等を年払いすれば、課税を繰り延べる効果が期待できます。

D-2中小企業退職金共済制度

中小企業において単独では退職金制度を持つことが難しい実情を考慮し、従業員の退職金を外部で積立し支払保険料を全額費用にできる制度です。

D-3中小企業倒産防止共済制度

取引先が倒産し、売掛債権等の回収が困難になった場合に、貸付けが受けられる制度です。「もしも」のときの資金調達手段として当面の資金繰りをバックアップしてくれます。なお、掛金を1年以上納付すれば解約手付金の支給も受けられます。もちろん掛金は、全額費用にできます。

D-4小規模企業共済制度

節税しながら退職金の積み立てができる経営者のための退職金制度です。法人の費用にはなりませんが、個人の方で掛金の全額が所得控除できます。

参考HP:厚生労働省

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/taisilyokukin_kyousai/ippanchuutai/

④旅費交通費

旅費規程を作成し整備していれば、旅費規程に基づいて、出張の際に直接かかる交通費、宿泊費以外の一定額を、日当として支給することができます。

⑤消耗品費

当期に利益が多く出そうな場合、必要な消耗品を買い、損金として処理をすると所得が減り節税となります。しかし厳密にいうと期末時点で実際に使用していない消耗品は貯蔵品として資産に計上しなければならないのでご注意ください。他に、青色申告をしている場合、少額減価償却資産として、10万未満の資産を一括で償却できますので利益が出そうでしたら、古い備品を新しくするのも良いでしょう。又、中小企業においては、取得価額が30万円未満の減価償却資産を平成18年4月1日から平成28年3月31日までの間に取得して事業に利用した場合には、年間取得額300万円まで損金として処理することができます。

2.法人税とは

1で法人税の節税についてお話しましたが、では法人税の基本について疑問を感じた時に復習もかねて読んでみてください。

2−1.法人税とは

法人税とは法人が得た所得に課せられる税金で、日本の代表的な国税の一種です。

原則、法人税率25.5%で課税されます。(H26.11.12現在)

(他方、個人が得た所得に課せられる税金を所得税といいます。)

尚、ここでいう法人とは普通法人で下記の9種類の法人を指します。

  • 株式会社
  • 有限会社
  • 合名会社
  • 合資会社
  • 医療法人
  • 相互会社
  • 企業組合
  • 中間組合(労働組合、管理組合)
  • 日本銀行

2−2.法人税の計算方法

1.会社法上(会計上)の利益を算出します。(利益=収益-費用)

2.会計上の利益から、法人税法上(税務上)の所得を算出します。(所得=益金-損金)

益金:収益に申告調整を行う

損金:費用(損失)に申告調整を行う

3.法人税法上の課税所得に税率をかけ、税額を算出します。(法人税=課税所得×法人税率)

4.各種税額控除を行い、法人税額を確定します。

2−3.法人税率

  • 普通法人・・・原則25.5%(特別復興税追加時期は28.05%)
  • 資本金が1億円以下の普通法人(中小法人)・・・課税所得が800万円以下の部分については15%(特別復興税追加時期は16.5%)。課税所得が800万円超の部分については25.5%。(特別復興税追加時期は28.05%)

その他詳細は国税庁のHPにある資料を参考にしてください。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2011_1/pdf/03.pdf

*今後も改定が繰り返されると思いますので、都度お調べ願います。

2−4.法人実効税率

普通法人は通常25.5%とありますが、実際はもっと税金を支払っていますよね。法人が課せられる税金はその他にも多くあります。では、具体的に法人が課せられる税金を見ていきましょう。

(国税)

  • 法人税
  • 特別復興税
  • 消費税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 所得税(地方税)
  • 法人事業税(都道府県税)

参考:神奈川県HP  http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/p1011396.html (H26.10.1~)

  • 法人住民税(都道府県民税、市町村民税)

参考:横浜市HP http://www.city.yokohama.lg.jp/zaisei/citytax/shizei/houjin.html

  • 固定資産税
  • 地方消費税

この中で、法人税、特別復興税、法人事業税、法人住民税の税率を合わせて、「法人実効税率」といいます。約40%程度を考えておきましょう。当たり前ですが、所得が出ているときに課税となります。つまり所得が出ている際に必要な経費を使い所得を抑えることによって、大きな節税効果が得られるでしょう「業績がいいと賞与が増える」ことも多いと思いますが、このことが大きな理由です。利益が出ているときに経費を使うことは、節税の意味でも高い効果がありますので、人件費、消耗品費、必要な修繕費、広告宣伝費を戦略的に使いましょう。現金がなければ会社は成り立たないので、キャッシュフローに気を付けながら節税対策をしていきましょう。

3.まとめ

いかがだったでしょうか。節税方法は他にも多くあります。今回はすぐに出来るということを観点にご説明しましたので、物足りないという方もいらっしゃるかもしれません。まずはこの方法を行ってみて、更に興味あれば深く調べていってください!

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